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サクラマス河口規制から安易な規制導入傾向に陥らないと良いが…

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ご存じの方も多いと思いますが、珊内川・古宇川・野束川・尻別川に対する河口規制の見直し(新規導入又は変更)計画があります。

目的は今後のサクラマス資源の維持・拡大です。

2021年9月に京極の親魚から伝染性のIHNウイルスが検出され、千走の幼魚17万尾を殺処分したため、令和5年の親魚の確保に苦労するだろうという特殊事情もあるようです。

この件について、ちょっと気になったので北海道HPを覗いてみました。

河口規制の概要

北海道後志総合振興局HP

議事録を読むと、会議では、委員が感情的に発言する場面があったことが伺えます。

そして、釣り人に対して次のような印象がある委員もいるようです。

・漁業関係者は規制があるのに釣り人は規制がなく取り放題で、クーラーいっぱいにサクラマスを持って帰っているところがある。

・ほっけも1人あたり20~30㎏も釣って持って帰っている。

・たらは出漁前時期に20~30㎏も釣っている。場所によっては30~50㎏という話も聞く。

・ミニボートは危ない

サクラマスの話が、今回の議案にないタラやホッケにまで飛び火しています。

船釣りの実態はわかりませんが、『遊漁者や遊漁船業者に対して、ライセンス協議会を通じて道に徹底した指導をお願いしたい』という発言から、どうやら規則を守っていない釣り人がいるようです。

これについての取り締まりの強化を要望していますが、まともな釣り人でこの意見に反対する人はいないでしょう。

しかし、一部の委員には陸からの釣りも規制がないため釣り放題との認識があるように感じられました。

実際のところ、ほとんどの人は釣れても数匹だと思います。

噂には尾ひれがつきものですし、SNSで積極的にボウズ情報を発信している人よりは大釣りの情報発信をする人が圧倒的に多いですから、その印象に残りやすいという背景があると思います。

こうした誤った認識に基づいて規制される釣り人としては、資源確保には漁業関係者こそ、

・網の目の大きさの規制や、混獲対策を徹底してやるべき

・海中のゴミは釣り人より漁業関係のものが多く、海洋環境対策を講ずべき

といったような考えも湧いてきます。

実際、釣り人の数とサクラマスの漁獲量については、

I事務局長から、

令和 3 年の釣獲尾数は 10,609尾となり、前年より 1,122 尾の釣果減となりました。海域別に見ますと、神恵内と西積丹の 2 地区で全体の 86%を占めております。また、釣行者の数は平成 29 年から増加しており、4,623 人と昨年に引き続き、4 千人を超えています。』

と報告があり、さらに漁業者が減少していることと、マリンネット北海道のデータを踏まえると、釣行者数の増加と漁獲量は正の相関は見られないと思います。

客観的にみると釣り人が資源枯渇の原因と見るには根拠が乏しい状況ですが、海区漁業調整委員会はメンバーの多くが漁業関係者で構成されている委員会であり、議論の方向から規制実施の方向で進んでいると感じます。



さて、今回の議案は道民に義務を課すという側面があるので、広く道民から意見を募集するという手続きの流れになっています。

感情的な意見で否決に導くのは難しいでしょうが、建設的的な意見であれば検討してもらえると思います。

個人的には本規制の是非はともかく、根拠が乏しいまま物事が進められたり、安易に規制が出来る流れになることは反対です。

事実、千走川を規制したという前例が今回の規制案に影響を及ぼしています。

で、今回の手続きの流れを調べてみたところ、意見募集の方法に疑問が浮かびあがりました。

というのも、意見募集要領を見ると、

・意見募集期間は令和4年2月25日~令和4年3月9日の13日間

・意見募集の方法は郵送またはファクシミリ

となっています。

ここで、北海道総務部のHPより、道民意見提出手続(パブリック・コメント)についての情報を見てみると、道民意見提出手続に関する要綱には、

政策形成過程の公正の確保と透明性の向上を図り、公開と参加を基本とする道政を推進するため、

・意見募集期間は原則として1か月以上

・意見等の提出方法は、原則として、電子メール、ファクシミリ、郵便又は電子申請サービスによることとし、実施機関が必要と認める場合は、これらの方法に加えて、他の方法を定めるものとする。

とあります。

本件が道民意見提出手続の対象なのかという点は不明ですが、道民に義務を課すという場合に意見募集を行うことを踏まえると、この手続きを準用すべきとも考えられます。

すなわち、意見募集期間を1か月以上とるべきであり、理由を示さずに電子メールでの受付を排除したことは手続き上問題があり、再度意見募集を実施することを要求するという方法があります。

適正な手続きを行うことは行政の義務です。

一般的に、行政は規制の是非を判断しません。

別途、委員会を組織し、判断は委員に任せて、行政は事務局に徹するのです。

一般市民にしてみたら「要綱」とか「要領」ってなに?意味あんの?って感覚ですが、行政マンにとっては適正な手続きをするこそが本来の仕事で、行政手続法という法律もあるくらいですから、手続きの不備を指摘されることは非常に困ったことになるのです。

2/27(日)20時の時点でパブリックコメント実施状況一覧(令和3年度)には載っていないので、そもそも今回の意見募集を当ページに載せる気はないかもしれません。

しかし、もし上記ページに載ったとすると、意見募集期間開始とパブコメ欄掲載開始時期が一致していないため情報を適切に開示したとはいえず、今回の手続きは不適切であると指摘することが出来るでしょう。


【以下、本件概要】

島牧漁協組合長を会長とする石狩後志海区漁業調整委員会は、漁協、各副市町村長を委員とし、北海道の職員が事務を担っているようです。

第22期第4回の開催結果(令和3年12月16日開催議事録)を見てみると、

『2021年秋さけ漁は、石狩・後志・檜山合わせて46億9千万円と史上最高となり、史上最高となりました…』

から始まります。

そして、サクラマスについては、

『9月5日に京極のふ化場でさくらますの採卵作業を終えた後、千走のふ化場でも作業にあたり、その後、京極の親魚からIHNウイルスが検出されたというわけでございます。これに関連して、千走のさくらますの幼魚、約 17 万尾を殺処分したため、令和 5 年の親魚確保には大変苦労するだろうと思います。後志総合振興局K水産課長のお力添えにより、河川における遊漁の規制を強化することにいたしまして、1 匹でも多く河川遡上させようというところでございます。』

とあります。

この後、後志管内さくらます船釣りライセンス制の話になり、

『令和 3 年のライセンス承認数は、278 件となり、前年よりも 40件の増加です。下段に平成 24 年以降の承認数の推移を示していますが、遊漁船専業とプレジャーボートが増加している一方、漁業者が減少しています。2 頁は、釣獲尾数と釣行者数の状況です。令和 3 年の釣獲尾数は 10,609尾となり、前年より 1,122 尾の釣果減となりました。海域別に見ますと、神恵内と西積丹の 2 地区で全体の 86%を占めております。また、釣行者の数は平成 29 年から増加しており、4,623 人と昨年に引き続き、4 千人を超えています。3 頁は時期別の釣獲尾数と釣行者数の状況です。これらのピークは
3 月中旬から 3 月下旬となっています。』

との事務局報告に対し、

『これまではそんなに気にならなかったが、今年の夏、ゴムボートがすごく多かった。プレジャーボートだったら、例えば小樽マリーナでも余市マリーナでも、当然、係留場がある。ゴムボートに関しては、一切無い。免許もいらないうえに、車に積んで海岸線に乗り付けることができる。これがすごく目立ってきた。11 月、12 月も多かった。非常に危険な部分もあるし、プレジャーボートよりももっと危険だと思う。』

という委員からの意見が出ています。

さらに、別の委員から次の意見が出ました。

『車で持ってきて海岸線からボート降ろして、釣りに行っている。ライセンス制をやるのはわかるが、陸釣りは許可がいらない。そうなると、ライセンス料を払うのがいやで、陸釣りをやっている人がかなりいる。河川の規制に関して、岩内のO組合長から要請があったし、神恵内村の方からも要請があったところで、コロナのせいかわからないが魚釣りをする人が増えている。漁師は漁獲規制をかけられているのに、遊漁は獲り放題であり、誰も取締に来ていないだろう。岩内の上架場なんて、さくらますをクーラーいっぱいに持って帰っている。漁業者が規制されているのだから遊漁も考えてもらわないとだめだ。取締をしっかりしてもらわないとだめだ。』

これに対し、事務局長は以下のように応じています。

『この問題は、ここだけではなくて全国的なものであって、全漁調連といって海区委員会の連合組織があって、そこから水産庁に対して、毎年要望をあげているのですが、その中でミニボート対策も要請しています。漁船登録や船舶検査のような検査制度をつくってなんとか規制してくださいという内容で要請しています。』

委員から次々と意見が出ます。

『内地は何 cm 以下だめとなればリリースするけれど、北海道なんて釣り放題だ。そのあたりはこれから道に考えてもらわないといけないし、この間なんて、さけ・ますもそうだが、ほっけを 1 人あたり 20~30kg も釣って帰っていた。漁師は規制されているのに、なんだよって思う。K課長には伝えているけれど、遊漁対策も考えてもらわないと困る。』

『まぐろは規制になった。たらに関しても、漁師は 10 月 15 日からしか出漁できないのに、遊漁は 10 月初めから 20~30kg も釣る。何日もやるとすごい量になる。それから、漁師も遊漁も同じ漁場でやっている。自分の刺し網のしかけも引っかけられるし、資源枯渇のもとになっている。』

H会長が一旦区切ります。

『この件につきましては、問題は数量ですが、場所や地域によっては、30kg~50kg 釣ったという情報を聞きます。そういったことがないように、遊漁者や遊漁船業者に対して、ライセンス協議会を通じて道に徹底した指導をお願いしたいと思います。それから、K課長からさくらますの資源について、IHN対策のための河川の規制の話をしていただきたいと思います。』

ここで、北海道より、規制案が発表されます。

『後志総合振興局のKです。会長の冒頭の挨拶でもありましたが、さくらますの河口規制強化について検討案を私の方から簡潔に説明させていただきます。まず、さくらますの資源を安定かつ持続的に利用するために、親魚の河川遡上を促進させて、計画的で安定的な捕獲採卵を行うことを目的に、珊内川、古宇川、野塚川、尻別川の禁止期間の前倒しや新たな区域の設定による効果を検証するため、河口規制の見直しを検討しております。内容ですが、禁止期間の前倒しについては、隣接の檜山管内や後志の千走川では、河口規制の開始日が 4 月 1 日に設定されていることや、神恵内及び岩内沿岸におけるサクラマスの来遊実態をみますと、5 月以降に比べ、4 月以前の漁獲割合が高いという実態であります。来遊実態に合わせて、河口規制の開始日を 4 月 1 日に 1 ヶ月前倒しにしまして、また、珊内川については親魚捕獲河川でありながら、河口規制がありませんので新たに河口規制を実施するものです。禁止区域の設定ということで、珊内川が捕獲河川としての役割を担っておりますので、その基準を適用しまして、右岸左岸沖合 300m を設定したいと考えております。規制強化におきましては、地元の遊漁団体や道内の主要遊漁団体である日釣振、釣魚連盟に事前説明して、地区海面利用協議会や海区公聴会などを活用して、広く周知を図りまして、遊漁団体や漁業者に理解を求めたうえで、来年 2 月の本海区委員会に諮りたいと考えておりまして、そこでみなさんに了解を得られれば、海区委員会による委員会指示の発動ということを考えておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。以上です。』

H会長

『ありがとうございます。これにつきまして、ご質問等ございますか。いずれにいたしましても、K課長が言われた河川について、数年前から、今までなかった規制や規制強化の要望があったわけでざいますので、ここはひとつ全体の要望として、この機会を利用して規制をかけるということで、よろしくお願いいたします。ご質問等はございますか。』

委員一同『(なしの声)』

H会長『なければ、さくらます船釣りライセンス制に係る委員会指示について、原案のとおり発動することとしてよろしいですか。』

委員一同『(意義なしの声)』

H会長『異議が無いようですので、議案第 2 号についてはそのように決定します。次に、議案第 3 号を上程します…』

 

 

以上です。

Posted by HIJIKI